誘いの夢。
朱里ケンと
慣れぬ銀座の交差点で待ち合わせ。
静かで、思いがけず奥に広い 純喫茶の2階で
まったりと 会話の間にはさまれた
アイスキャラメルミルクティー。
外へ出ると、
夕立ちが銀座を覆っている
小さな赤い傘
足元はびしょぬれで
滑らないように注意しながら
二人で相合い傘をして辿り着いたのは
エルメスのギャラリー。
中川幸夫氏の展覧会「誘いの夢・・・(Ondes oniriques)」のオープニング。
エレベーターで8階に上がり
談話する人々の間をするするとすり抜けると
ふわっと足元から持ち上げられるような
いいにおいが満ちている。
奥の吹き抜けのスペースへ・・・
そこは、
床一面に敷き詰められた、ラベンダー。
富良野と南フランスから
はるばる銀座まで香りを届けに来た、薄紫のカーペット。
ごろごろごろごろ・・・・
遠い絵画の中のように 走り回って 転がり回って
埋もれてしまいたくなる。
階段を上がって、上から眺めてみる。
薄い紫と、少し青がかかった紫。
2色のグラデーションと、流れる柔らかい布。
・・・誘われる。
ラベンダー畑の中に車いすを乗り入れた中川氏は、
言葉を発することが難しいように見える。
そのかわり、しきりに両手を動かして
“コトバ”を発している。
そして横にいる男性が時おり手を鳴らして
それに答えているようだった。
中川氏と並んだアラーキーがまるで“生徒”のように見えて
それだけ中川氏の大きさを実感する。
カメラ陣のフラッシュが中川氏の姿に集中する
だけど
あまり長くは見てはいけない気がして
ましてはカメラなんて向けては絶対にいけない気がして
全身で表現し、指先からコトバを伝える
中川氏の存在を感じてしまったら
涙がでそうで その場を立ち去った。
もう一度、ラベンダーを身体いっぱいに吸い込む。
眠りの中にまで
花と ここにいる歓びと
清く優しい香りを連れて行く。
中川幸夫展 「誘いの夢・・・」
<メゾンエルメス8階フォーラム/7月26日〜10月5日>