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朧の彼方、灯りの気配

<「朧の彼方、灯りの気配」について>


「気配」という確実な“存在”。
形はないのに、信じ、それによって揺さぶられることや、繋がれていること。

信じている「見えないもの」と、
幻想でも夢でもなくそこに確実に「肉体」があるということ。

この体は、気配を発する道具。
そのつながりを実感し、確かめながらの創作でした。

私は“声を出す"というかぎりなく原始的なことしかできません。

声は、呼吸そのもの。
吸っては吐き、吐いては吸う。
その吐いた息が、音になった。

それだけのことなのに、
声を出して、 重ねたりしていくうちに浮かび上がるのは、上に昇っていく感覚です。
その声の重なり、連なりを軸にした作品をこれから創っていくんだと思いました。

自分は本当に空っぽで、
明確なメッセージも、人を変えられるような力も、そんな欲望もない。
ただ、生身の肉体からにじみでた愛おしい気配を、生むことができるなら、幸せだと。

霞んだ景色の向こうにぼんやりと見える微かな灯り、
記憶の中の懐かしいにおいや、
好きな人に触れる前にすでに感じている体温、
自分の声がそういう風に響けばいいな、と願っています。



* * *



<サウンドプロデューサー・益子樹さんのこと。>


今回、サウンドプロデューサーとしてROVOの益子樹さんと組み、
話し合いながら作っていったことは大切な経験になりました。
益子さんが環境を整えて提供してくれる「きもちいい音」は
何にも変えられない歓びだったし、
うまく表現しきれない私のアイディアを否定せず
受け取って拡げてくれる益子さんの存在にいつも救われていました。

益子さんとスタジオにこもっている密な空間は、
とても自由で、なにもかっこつけていない、
精神がのびのびとできる場所。
音も、声も、発想も、どんどん自由になっていきました。
あんなに安心できる空間があったことは、
とても贅沢で、恵まれていました。



* * *


<全曲解説>


「Opus and Mayverse」

作詞:藤戸じゅにあ  作曲:藤戸じゅにあ

Sakamoto Miu: Vocal & Chorus  坂本美雨
Okabe Youichi: Percussion  岡部洋一
Katsui Yuji: Electric Violin  勝井祐二
Masuko Tatsuki: DX7 & Juno106  益子樹

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THE JETZE JOHNSONの藤戸じゅにあ氏と出会い
彼の声や詩の世界、そのたたずまいに胸を打たれ、もう10年近くになります。
今までもゲストでジェッジのアルバムやライブに加わったりすることもありました。

孤独と戦う男の子の姿を描いたこの曲。
「オーパス」と「メイヴァース」は、
彼が大切にしていた2枚のタオルについていた名前だそうです。

このコーラスワークをきっかけに、
“声”を軸に置いたアルバムが朧げながら見えてきました。



* * *



「いくつかのこと」

作詞:坂本美雨  作曲:オオヤユウスケ

Sakamoto Miu: Vocal & Chorus  坂本美雨
Takada Ren: Pedal Steel  高田漣
Takada Yasunori: Drums  高田康則
Masuko Tatsuki: DX7 & Electric Guitar  益子樹

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ずっとオオヤ氏のメロディーを歌いたいと願っていました。
その晩のうちに自分でもびっくりするほどストレートな歌詞が書きあがり、
ストレートな言葉はこそばゆかったけれど、
オオヤンのメロディーにはそうさせてくれる何かがありました。

高田漣氏のスティールギターが歌に絡んだり寄り添ったりしてくれる音色が
はじめからずっと頭の中で響いていて、
実際スタジオで弾いてもらった時には思わず涙がでました。



* * *



「Silent Star」

作詞:坂本美雨  作曲:トベタ・バジュン

Sakamoto Miu: Vocal & Chorus  坂本美雨
Yoshigaki Yasuhiro: Drums  芳垣安洋
Kitamura Shuji: Organ Foot Bass  北村秀治
Hirose Chiyo: Piano  広瀬千代
Yoshino Yuka: Irish Harp  吉野友加
Katsui Yuji: Electric Violin  勝井祐二
Masuko Tatsuki: DX7,Alpha Juno  益子樹

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レコーディングの一番最初にとりかかった曲でありながら、一番難しい存在でした。
アレンジ、歌い方、コーラス…益子さんと話し合いながら
二転三転どころか、八転くらいしたかもしれません。

スタジオでROVOの敏腕ドラマー芳垣さん、ピアノの千代さん、
マスタリング職人として有名な北村さんには"足"でベースラインをお願いしライブな録り方をしました。
その後tico moonのユカさんにアイリッシュハープを、
勝井さんにエレクトリック・バイオリンを弾いていただき、贅沢な一曲になりました。

"抗えないものを待っていたんだ"
ある人の立ち姿が忘れられなくて、そのスッとたっているだけの姿こそが
全てが凝縮された抗えないものに感じられたところからふくらんだ曲です。



* * *



「おぼろの彼方」

作詞:坂本美雨  作曲:坂本美雨/勝井祐二/益子樹

Sakamoto Miu: Vocal & Chorus  坂本美雨
Katsui Yuji: Electric Violin  勝井祐二
Masuko Tatsuki: DX7 & SH101  益子樹

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アルバムの全体の構成を組み立てていた早い段階で
声のインスト曲を作ろうと決めていたところ、
益子さんから、勝井さんと3人で即興をやってみようと提案があり、
ある日スタジオに集まっていっせーのせ、即興のセッションを行いました。

何テイクか録ったのですが、一発目に録ったものが一番良く、
それをいじらないまま上に薄くコーラスだけを重ねました。

当初歌詞をつけるつもりはありませんでしたが、
NYの実家の近くのハドソン川沿いの風景が浮かんできて、
声と言葉が一緒に出てきました。

二人のおかげで、解放されるような気持ちでした。
ROVOの音楽もそうですが、二人と演奏していると、ふっと身体が浮くような瞬間があります。
そして勝井さんのバイオリンには、歌を呼び覚ます力があるように思います。



* * *



「Still Song」

作詞:坂本美雨  作曲:ミト

Sakamoto Miu: Vocal & Chorus  坂本美雨
Yamamoto Taro: Wave Station & RS7000  山本太郎
Tokuzawa Seigen: Cello  徳澤青弦
Masuko Tatsuki: DX7  益子樹

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ミト氏からこの曲のデモを受け取った夜、一晩中聴きながら、
なぜか溢れて止まらなかったのは、どうしてもここにとどまっていたい、
なぜ過ぎ去っていかなくてはいけないのか!ということでした。
時が経って大切な存在が死ぬこと、自分も人も心変わりをすること、
何もかもが変化してしまい、その記憶さえも忘れていくこと…
そのことにもう耐えられない、
もう嫌だ!と、そればかりがぐるぐる巡っていました。
赤ちゃんみたいに。

この曲のボーカル録りの日から、
益子さんが手に入れたある機材の導入により、
歌の響きが革命的に良くなりました。
より美しい響きで聞こえ、録音されている。
本来の響きは、こんなに強くて輪郭がはっきりしていて気持ちいいものなんだと知りました。
息づかいまで、曇りなくクリアに響いてくる。
この機材が来てからの歌入れは今までとは別の緊張感があり、歓びそのものでした。

この曲はできるだけ音数を少なくしたかったけれど、
どうしてもチェロが聞こえてきてしまう。
最後に青弦のチェロが絡まって、やっと腑に落ちたという感じです。



* * *



「Swan Dive」

作詞:藤戸じゅにあ/坂本美雨  作曲:藤戸じゅにあ

Sakamoto Miu: Vocal & Chorus  坂本美雨
Yamamoto Taro: Wave Station,RY30 & RS7000  山本太郎
Masuko Tatsuki: DX7 & MPC3000  益子樹

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本の世界に引きこもっている"僕"のところへ、白鳥がやってくる。
本当の世界はより多くのことで満ちあふれている、と言い残し飛び去っていく。

その姿を見て、"僕"は初めて 家から遠く離れた外の世界へ踏み出してみる。
暗闇と光、その両方と向き合えるように生まれてきていたとわかる。

そして、いつか歌も消える時、眠りにつく。
光も暗闇も溶けてなくなり、
いつしか "僕"も消えている。

そんな物語です。


PVでは、小林顕作氏プロデュースによるダンスユニット「砂と女」が踊ってくれています。



* * *



「あかりの気配」

作詞/作曲:坂本美雨

Sakamoto Miu: All Instruments, Vocal & Chorus  坂本美雨
Kobayashi Kensaku: Harmonica  小林顕作

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ハーモニカ=誰かの"呼吸"が、
朧の彼方から響いてくるこの曲は、
今までで最も個人的です。
歌の内容もアレンジも歌の質感も、
裸で外に出ているような、心もとない感じです。

自分の中は、空っぽで、なんにもない。
時は流れるし、失っていくし、しがみついてもいけない。
だけどここには肉体があって、吐いた息が音になって、
自分とは違う人間に触れることができて、宿すこともできる。


“あふれる よろこび”

この言葉で、このアルバムを終えたかった。
それができて、やっと完成しました。



* * *



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